女性管理職育成に不可欠な「パイプライン」構築の方法

日本の企業での女性管理職の割合が低いなか、最新のトレンドとして注目されるのが「パイプライン構築」。これは、女性が組織内で順当に昇進していくための経路を整備し、才能を育むための仕組みのことです。

しかし、実際の取り組みは遅れており、上場企業の女性取締役率は10%未満に留まっています。この状況を打破し、D&Iを促進するためには、女性管理職育成の具体的な手法が求められています。

本コラムでは、最新のトレンドに基づき、日本のジェンダーギャップを克服するためのパイプライン構築の方法を提案します。

そもそも、日本に女性管理職が少ない理由

多くの企業で女性管理職の数が少ないという現実の背後には、さまざまな理由が潜んでいます。一般的な印象として、「女性は管理職になりたがらない」という意見が聞かれます。実際、女性が「自信がない」と述べ、昇進を断るケースが少なくありません。

パーソル総合研究所が行った2022年の調査によれば、女性活躍推進における課題を人事・経営層に尋ねると、「女性の昇進意欲が無い」が42.4%、「十分な経験を持った女性が不足している」が41.6%、「登用要件を満たせる女性が少ない」が40.8%で上位を占めています。これらの課題が女性管理職の増加を妨げている主な要因とされています。

▼図:企業が感じている女性活躍のための課題

図:企業が感じている女性活躍のための課題
出典:「パーソル総合研究所、女性活躍推進に関する調査結果を発表 男女の昇進意欲の格差解消に、『時間』『経験』『展望』観点の施策を」

女性の昇進意欲低下の構造的要因

画像:女性管理職育成に不可欠な「パイプライン」構築の方法

女性の昇進意欲が低いとされる一因として、早い段階でのモチベーション喪失が挙げられます。

『女性の視点で見直す人材育成――だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる』(ダイヤモンド社 ,2018)によると、入社1年目では、管理職になりたいと考えている女性は男性よりも少ないものの差は比較的小さく、2年目以降においてその差が拡大します。
具体的には、男性は9ポイントほどしか減少せずにキャリア目標を維持する一方で、女性は20ポイント以上も減少し、管理職を目指す意欲が急激に低下しています。つまり、入社2年目においてキャリア見通しを「下方修正」する女性が少なからず存在するという事実が浮かび上がります。

この現象からは、日常業務の中で女性がモチベーションを喪失する背後に、大きな男女差を生む「構造的要因」が潜んでいることが考えられます。単なる個人の努力や能力だけではなく、組織全体や職場文化における課題も女性の昇進意欲に大きな影響を与えていることを示唆しています。

構造的要因には主に2つある

画像:女性管理職育成に不可欠な「パイプライン」構築の方法

では、その構造的要因とは何なのでしょうか。

要因1:組織の中にある無意識の性別役割意識

デロイトトーマツの「女性役員比率30%に立ちはだかる壁~タレントパイプライン強化にみる解決の糸口~」によると、1つ目は組織の中にある無意識の性別役割意識とされています。

以下引用:

アンコンシャス・バイアスとは、自分自身では気づいていないものの見方やとらえ方のゆがみや偏りで、無意識の偏見とも呼ばれる。例えば、部下に仕事を任せる際に、「彼女には小さい子どもがいるので、海外出張や転勤をさせられない」と考える上司もいると思うが、実際にどのように働けるのか・働きたいかは一人一人異なるはずであろう。性別や育児中か等によって任せる仕事が変わるとすれば、本来であれば得られた成長機会を逸することになる。しかも、上司が自覚なく持つバイアスによる結果だとすると、防ぐことも難しい。このような、性別が起因するアンコンシャス・バイアスはあらゆる場面で発生し、昇格・任用等の場面も例外ではない。その影響を最小限にとどめるためには、バイアスが発生する可能性に気づかせ、バイアスによる格差を是正する意図的な取組み(クオータ制・スポンサー制度)への理解を促すことが必要である。

関連記事:女性の挑戦モチベーションが低くなる職場の共通点

要因2:人材プールの枯渇

そして2つ目は人材プールの枯渇です。「管理職にふさわしい女性がいない」という話を耳にすることがありますが、そもそも女性が育成対象に入っていないケースがほとんどです。

MiniMe(ミニミー)症候群というものを聞いたことがありますか?
これは「経営幹部の71%が、自分と同じ性別・人種の人を後継者として指名する傾向がある」ということです。女性やマイノリティは、経営幹部の後継者のプールに入っていないことが多々あります。このようにキャリアが進むにつれて女性の割合が減少する傾向は、「水漏れパイプライン(Leaky Pipeline)現象」とも呼ばれます。

ところどころ穴が空いたパイプラインを水が流れると、水漏れによってどんどん水量が減ってしまうように、キャリアが進むにつれて「女性」であることに関連したさまざまな要因が女性をリーダー職から遠ざけ、上位管理職や役員等まで進んだ段階では男性ばかりが残ってしまうのです。

キャリアパスから次々と脱落していくこの水漏れパイプライン現象は、深刻な解決すべき問題です。

その結果何が起きるか。女性にとって「上を見ても、斜め上を見ても男性ばかり」、つまり、女性の周囲に、女性の役職者がいない環境がつくられます。ゆえに、「見たことのないものになれと言われても困る」という状況に陥るのです。女性管理職の「ロールモデル不足」は、女性のキャリア選択において大きな影響を与えてしまいます。

パイプラインを構築するためには

画像:女性管理職育成に不可欠な「パイプライン」構築の方法

女性にとって上位職のロールモデルがいることは、上を目指す動機づけとなります。そのため、多くの企業が「女性リーダーのロールモデルを」とさまざまな施策を行いがちです。

しかしここで重要なのは「キラキラしたスーパーウーマン」だけを提示すると、かえって女性のやる気を削いでしまうということです。等身大であること、そして多様なタイプを提示することが重要です。育児をしながら管理職をしている方、独身の方、介護や単身赴任経験者など、多様なキャリア・ライフイベントを経て、自分らしいリーダーシップのスタイルを見つけてきた方に、等身大の失敗談なども含めてオープンに話してもらうこと。さらにはロールモデルの話を一方通行で聞くだけではなく、相談に乗ってもらう機会があるなど、双方向のやりとりをつくることが重要となります。

「ロールモデルがそこまで社内にいない」という声も多くありますが、そういった場合は、社外メンターなども検討してみるといいかもしれません。社外のロールモデル的女性が、メンターとして、女性一人一人の課題に寄り添い、やる気を出す支援をしていくこと。遠回りのように見えますが、このように個別の「点」の支援をしていくことで、水漏れしているパイプラインが塞がっていくのだと思います。

関連記事:女性が管理職になりたくない? キラキラロールモデルの罠

さいごに

女性活躍の取り組みは1-2年ではすぐに成果は出ません。5年以上続け、10年近く続けるとようやく数値の変化が現れると言われています。しかも、一度うまくいったからと言って取り組みをやめると、また逆戻りしてしまうとも言われています。 いかに地道な、そして未来を見据えた長い取り組みをしていけるかが、組織風土の変革、そして多様性を活かせる組織づくりのカギとなるのです。

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